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(聞き手/平田 邦彦)

平成28年11月開場が決定

—築地市場から豊洲新市場への移転がいよいよ間近に迫ってきましたが、開場時期が決まりましたね。

 これまで、開場時期については未定でしたが、昨年暮れに平成28年11月上旬の開場を決定したところです。

 新市場への移転は、市場業界の方々の協力が不可欠で、とくに開場時期は営業に大きく影響するため、市場業界の意見や要望を聴いた上でさまざまな調整を行い、昨年12月17日の「新市場建設協議会」で市場業界と合意、正式決定しました。

 今後は、新市場への円滑な移転、開場に向け、都と市場業界が一丸となって取り組んでいく考えです。

—課題となっていた土壌汚染対策についてはいかがですか。

 新市場の建設に当たっては、生鮮食品を扱うわけですから、何よりも安全性の確保が第一です。そのため、平成23年8月から、わが国最先端の知見と技術を駆使して、土壌汚染対策工事を進めてきました。その結果、昨年10月末に対策工事を終え、11月27日には有識者による技術会議において、すべての対策の完了が確認されました。

 これにより、豊洲新市場用地の安全性は確認されたことになりますが、都としては、今後も地下水管理システム等により、永続的に徹底したリスク管理を行い、都民や市場関係者が安心できるよう万全を期していきます。

—豊洲新市場はどのような市場になるのでしょうか。

 現在の築地市場は昭和10年に日本橋の魚市場と京橋の青物市場が移転して開場しましたが、80年を経て、施設の老朽化、過密化が著しく、深刻な状況となっています。

 また、近年の消費者の食の安全・安心に対する意識の高まり、さらに、食生活の多様化、産地直送などによる流通チャネルの拡大など、市場を取り巻く環境の変化への対応も求められています。

 そのため、豊洲新市場は、50年先まで見据えた首都圏の基幹市場として、豊富で新鮮な生鮮食料品の円滑な流通と価格の安定などの機能に加え、生産から消費まで一定の温度管理を実現し、品質管理の高度化、衛生対策の強化を実現します。

 また、敷地面積が築地の約23ヘクタールから約40ヘクタールと大幅に拡大されるため、十分な駐車場や荷さばきスペースが確保でき、物流の効率化が大きく進むと期待されています。

 

東京五輪で生鮮食品を提供

—築地市場には「築地ブランド」とも称される食の魅力がありますが、豊洲新市場への移転でどうなるのでしょうか。

 豊洲新市場では、これまで築地市場が培ってきた歴史と伝統を受け継ぐとともに、築地ブランドを豊洲で更に発展させていきたいと思います。また、食の魅力を楽しみながら市場の活気を感じることができる「千客万来施設」を整備します。新市場と合わせて豊洲新市場としてのブランドとしてその魅力を高めていくことを目指していきます。

 一方、築地市場の跡地については、現在、地元中央区や東京都などで、どういう街づくりをするか検討しているところです。

 いずれにしろ、築地は築地、豊洲は豊洲で、それぞれ賑わいの場ができればと考えています。

—2020年オリンピック・パラリンピックは、豊洲新市場の機能や魅力を世界に発信する格好の舞台になりそうですね。

 1964年の大会では、生鮮食品の多くが冷凍食品でまかなわれたと聞いていますが、2020年の大会ではより新鮮な食材を選手、役員、観光客の皆さんに提供したいと思っています。

 一方、オリンピック・パラリンピックでは、例えば魚については、どこで獲れたかという産地認証がないと使うことができないと聞いています。しかし、日本の漁業では、ヨーロッパなどと比べ、取り組みが遅れているのが現状です。ですから、2020年大会を契機に、豊洲からそうした仕組みづくりを日本中に波及させていくことも重要な役割と考えています。

—最後に、豊洲新市場開場に向けた決意をお願いします。

 豊洲新市場ができるということは、単に入れ物が新しくなるというだけではなく、新しい試みを始める契機にしなくてはいけないと思っています。

 豊洲新市場で始まった取り組みが日本や世界の市場のパイロットケースになっていく。そんな施設となるよう、業界の方々、とくに若い人たちと都の若い職員が、10年、20年先を見据えて市場の将来を考えていく場をつくっていきたいと考えています。