
局長に聞く 39
生鮮食料品流通の中核を担う
中央卸売市場長 中西 充氏

東京都の各局の取り組みを局長自らが紹介する「局長に聞く」、39回目の今回は中央卸売市場長の中西充氏。開場から76年が経過し老朽化が進む築地市場の移転先として、現在、江東区の豊洲で整備が進められている。食の流通などの面で新しい市場に期待される役割、11ある都の卸売市場の今後、東日本大震災後の被災地支援などの取り組みについて聞いた。
(聞き手/平田 邦彦)
豊洲新市場の26年度開場に全力
?豊洲新市場は平成26年度の開場が予定されていますが、どのような市場を目指すのでしょう。
築地市場は開場してから76年が経過しており、老朽化が進み狭あいになっています。
東日本大震災でも幸い大きな被害はありませんでしたが、小さい被害はかなりありました。豊洲への移転により、現在築地市場が抱えている問題を解消し、今日の流通環境に的確に対応できる卸売市場を目指します。
新市場の施設整備ですが、閉鎖型施設として温度管理をすることで高度な品質・衛生管理を実現します。また十分な駐車場の整備や荷捌きスペースの確保等により、物流の効率化を図っていきます。さらに、加工・パッケージ、転配送機能など消費者ニーズの変化や新たな顧客ニーズなどにも対応していきます
?今後の整備スケジュールは。
昨年は用地を全て取得しました。現在、都市計画決定や土壌汚染対策工事にも着手しており、新市場整備に向けて着実に歩を進めているところです。
土壌汚染対策は、平成25年3月完了の予定です。汚染物質を確実に除去するなど工事を万全に進めて、市場用地としての安全・安心を確保していきます。
建物の建設は来年度中に工事着手する予定です。平成26年度中の開場を目指し全力をあげていきます。
?豊洲新市場への円滑な移転のためには、業者への配慮も必要です。
新市場整備にあたっては、施設の整備のみならず、担い手となる市場業者の円滑な移転も大変重要です。
そのため、都では市場業者一人ひとりに対して個別面談を実施して丁寧に耳を傾け、そこで把握した課題・要望等も踏まえ、市場業者が円滑に移転できるよう、早い時期に支援策を提示していきたいと考えています。
放射性物質対策に万全つくす
?東京都は11の中央卸売市場を有していますが、市場の今後はどうあるべきでしょう。
昨年5月には東京都卸売市場審議会から、平成27年度を目標年度とする「第9次東京都卸売市場整備計画」の指針となる「東京都卸売市場整備基本方針」が答申されました。
この方針では、東京都の中央卸売市場は各市場が相互に補完しながら一体的にその機能を発揮しているという、他都市とは異なる特徴があることから、各市場についてその特徴・強みなどを活かし、着実な整備・運営を進め、卸売市場全体の総合力を強化するべきとしています。
今後公表する予定の整備計画は、基本方針の考え方を踏まえて策定するとともに、今後も卸売市場が生鮮食料品流通の中核を担うべく運営していきます。
?東日本大震災により生鮮食料品の流通も大きな影響を受けましたが、中央卸売市場はどのような取り組みを行っていますか。
東日本大震災は市場業界をとりまく環境を一変させました。
被災地では交通が寸断されたことで、食料などの支援物資が十分に行き届かない事態に陥りましたので、災害発生時における市場の果たすべき役割などを再考しなくてはならないと実感しました。
また、原発事故は生鮮食料品の出荷制限や風評被害を引き起こし、被災産地に大きな打撃を与えただけでなく、都内の市場でも被災地産からの入荷量が大きく落ち込む等の影響がありました。
こうした事態を受け、被災地支援イベント開催や、市場の代金決済機能維持のための無利子貸付けの実施、被災県の出荷者へ流通支援金を交付するといった施策を講じています。
牛肉の安全性に対する都民の不安を払拭するため、食肉市場の関係業界や福祉保健局とも連携し、芝浦と場で、と畜解体する全ての牛について放射性物質の検査を行い、「牛肉安全確認証」の発行を開始しました。
今後とも被災地の復興を支援するとともに、市場に流通する生鮮食料品の安全・安心を確保し安定的な流通を確実なものとするために努力していきます。