
ハニーファイバー株式会社
都内の粗大ごみの中で他を圧倒して多いのが布団である。廃棄する布団を減らし、リサイクルして環境保全に役立てようと、ユニークな活動を開始したのが「おたふくわた」のブランド名で知られるハニーファイバー株式会社。布団を粗大ごみにせず、環境に役立てる取組みを取材した。
(取材/津久井 美智江)
エコとは、ものを長く使うこと
ものを大事に使うことである
綿の布団は打ち直しができるから環境にやさしい。しかし、打ち直しをしなくなった布団はどうなるのか? そう、粗大ごみである。都内23区から出る粗大ごみの圧倒的1位が布団で、その数は年間約67万枚。布団は、素材が木綿や羽毛、羊毛、合繊などさまざまで、分別しにくいことからリサイクルが難しく、すべて焼却されているのが実情という。
創業天保11年(1840)、「おたふくわた」のブランド名で知られる綿布団のハニーファイバー九代目・原田浩太郎さんは、その事実を知り、「多くの粗大ごみを出すのは布団業者にとって恥」と、布団リサイクルに取り組むことを決めた。
「打ち直しはもちろん、うちの布団を買ってくださったお客様が、古い布団の回収を希望されれば、引き取ることにしました。最近は百貨店でも打ち直しをするところが増えてきていますが、やはり50代以上の人にとっては布団は財産なんですね。粗大ごみとして捨てられない。でも、回収された布団が、再利用されて環境に役立つとしたら、どうでしょう。そこで、繊維リサイクル業者や提携工場、大学機関などと協力しながら、さまざまな活動を開始したのです」
まずは、東京農業大学と協力して100%木綿の綿を土に埋め、その腐敗度や作物に与える影響などを研究することにした。すると、8カ月で綿は完全に土に戻っていた。そこで、土木資材メーカーと技術提携し、「木綿」「合繊」「混綿(木綿と合繊のミックス)」の3種類の土壌フィルターを作り、神宮前の同社屋上に庭園を設けて実験を開始。
その結果、綿とポリエステルを混ぜたフィルターが、屋上緑化に適していることが分かった。下に伸びようとする根を横に広げさせ、根が成長して建物を傷めることを防ぐ効果があることが高いのだ。また、屋上緑化の場合は重量制限があるので、フィルターを敷くことによって、重さの負担も軽くなる。さらに、土の値段が高いので、コスト削減にもつながるという。
「結局、エコとは、こうすればCO2が減るということではなく、ものを長く使うこと、ものを大事に使うことだと実感しています。例えば綿100%の布団なら、打ち直して、打ち直して使い続け、本当にだめになったら、極端な言い方をすれば『庭に埋めてください』です。土から出来た綿を、また土に戻すというのは理にかなっていますよね。僕らはこれをエコというより『健全的廃棄処分』といっています」
回収した布団の生地も、工場と提携しウエス(工業用雑巾)として再利用する目処も付いた。今は、CO2を多く出さないで炭化できるのであれば、布団綿を炭化して、土にできないか実験しているところだという。
「実は7月、クルマをプリウスに変えたんです。エコに関する取材が多いのに、CO2を出す大きな車に乗っていてはまずいなと(笑)」