
内田洋行
ICTとデザインをベースに空間構築を手がける株式会社内田洋行。特に近年はLEDなど新エネルギーを活用したECO事業にも力を入れる。その実践の場である本社屋では、想像を超えた省エネが実現されていた。
(取材/種藤 潤)
ICTを駆使し電力消費を「見える化」
無理なく機能的な省エネ空間を自ら実践
「現在学校やオフィスなどでLED照明設置が推進されていますが、弊社の技術を活用すれば、もっと省エネ効果を上げることができるんですよ」
そう言ってオフィス事業本部ECO事業部の山本哲之課長は、iPadを操作して、取材に使用している会議室の平面図とそこに設置されているLED照明を表示させた。そして私の頭上を照らしていた照明だけを、iPadの操作で消してみせた。
「全社員がこうしてiPadまたはPCで、場所ごとに細かくゾーニングされた照明や空調を自由に制御することができるようになっています」
続いて山本課長がiPadで見せてくれたのは、本社内の電力使用量を示したグラフ。これも全社員がiPad、PCでリアルタイムに閲覧することができるという。
従来オフィスビルでは、照明や空調などの電力はビル単位、フロア単位でしか管理できなかったが、同社が2004年に完成させた空間内に空間を構築する『スマートインフィル』という独自のプラットフォームをベースに、同じく同社が開発した制御システムを組み合わせることで、エリア単位、組織単位での電力状況の「見える化」、そして管理、操作を可能にしている。
「無駄な電力を把握し、できるだけ細かく節電する。当たり前のことですが、それができるインフラがこれまでありませんでした。ですから、それを作るのが我々の仕事です」
この本社ビルでは、2008年からLED照明を導入し、翌年には照明の消費電力とCO2排出量の63%を削減することに成功した。しかしそれだけにとどまらず、「見える化」による無駄な電力カットの節電効果で、2011年には前年比20%の消費電力の削減に成功した。
こうした一歩先行く省エネ空間の創出は、同社のICTとデザインを駆使した空間構築の集大 成ともとれる。前出の『スマートインフィル』や情報システム技術はもちろん、内装への木材活用『木づかい運動』も実は省エネ効果に貢献している。木材に反射する光は柔らかく明るい印象なので、少ない電力量の照明でも、十分空間を明るくすることができるのだ。
「ICTと新エネルギーを連動させ、さらに人間の意識と行動を少し変えれば、無理なく機能的な省エネ空間を作ることは十分可能なんです」
自ら実践する山本さんの言葉に、一切の揺るぎはない。