環境
2009年4月20日号
わが社の環境戦略
わが社の環境戦略(4)

金門光波

 ナノテクの発展を支える青い光“He?Cdレーザ”。そのレーザを発振するために必要不可欠なのが、環境負荷物質の規制対象になっているカドミウムである。世の中にその代替となる物質が存在しないカドミウムを扱う金門光波の環境への取組みをうかがった。

(取材/津久井 美智江)

環境負荷物質を扱うからこそ、環境問題には真摯に取り組む

  本紙創刊号「TOKYO世界一 技術・技能」でご紹介した金門光波。主力商品は、「He?Cd(ヘリウム・カドミウム)レーザ装置」である。現在、多くのレーザが開発されているが、従来のような赤や緑ではなく、青と紫外、つまり442nm(ナノメートル=10億分の1メートル)と325nmの波長を放出できることが最大の特徴。その用途は、レーザプリンター、光ディスク、光造形法、レーザ顕微鏡など多岐にわたり、最近では、がん細胞を検出するファイバースコープに組み込まれるなど、細胞分析や生体治療、バイオテクノロジーにおいても貴重な存在となっている。

 いまや国内シェアは95%を占め、アメリカをはじめ、ヨーロッパやアジアの60%を有しているが、商品名にも含まれているカドミウムが、ヨーロッパのRoHS(ローズ)指令や国内のグリーン調達法などで、環境負荷物質として水銀、鉛などとともに規制対象となったのだ。
「325nmの紫外の波長というのはカドミウム独特のものであり、他の物質に代替することは不可能なのです。弊社のHe?Cdレーザ1台には、機種によって違いはありますが、純粋カドミウムが数g充填されています。これはガラス管の中に封印されており、外部に流出することはありません。また、レーザチューブ内にカドミウムを封印したまま使用していただけるよう装置を構成しています。使用済みのレーザチューブは法令に則り処理し、環境への負担を少なくしています」と話すのは福島工場の佐藤毅取締役工場長。

 現時点では、レーザ装置自体がRoHS指令による規制製品対象から外れているので、輸出は可能であり、また、グリーン調達法においても、現在このレーザの代替品が存在しないため、特別扱いされている。
「しかし、今後は何らかの規制対象になる可能性はあります。まずはできることをきちんとやろうというということで、2006年の会社設立と同時に環境対策委員会を立ち上げ、環境規制物質を買わない、使わない、売らないを基本に、2年間かけてカドミウム以外のレーザ装置に使われている2千数百種類の部品の調査を行い、規制物質が含まれているものは代替品に切り替える作業を行ってきました。そして今年1月には「品質環境方針」を作成、宣言しました。今後は環境負荷軽減の立場から、省エネ、省資源等も含め、技術開発に取り組んでいきたいと考えております」

 環境負荷物質の規制対象であるカドミウムを扱うことの重要性を十分認識し、代替物質がないからこそ慎重に取り扱っている真摯な姿勢がうかがえた。