
業平橋押上地区開発事業(東京スカイツリー計画)
東武鉄道株式会社 東武タワースカイツリー株式会社
株式会社東武エネルギーマネジメント
地球規模で環境問題が叫ばれている現在、まちづくりにおいても、安全・安心はもちろんのこと、環境への配慮は不可欠である。各企業が取り組むさまざまな環境対策を追うシリーズ第2回は、東武鉄道、東武タワースカイツリーならびに東武エネルギーマネジメントが手がける業平橋押上地区開発事業。省CO2の要ともいえる地域冷暖房システムなどについて取材した。
(取材/津久井 美智江)
地域冷暖房と自然エネルギー
などで省CO2に貢献
日本だけでなく、世界からも注目されている「東京スカイツリー」。その周辺の業平橋押上地区の開発に取り組んでいるのが、東武鉄道と2社である。
「鉄道という環境にやさしい移動手段を提供している企業が手がける事業として、安全・安心はもちろんのこと、環境への配慮が重要であると考え、再開発に当たってはさまざまな省CO2技術を導入しています。その柱となるのが地域冷暖房と自然エネルギーなどの活用です」と、話すのは東武鉄道の部長・戸澤隆夫さん。
柱のひとつである地域冷暖房とは、1カ所、または数カ所のプラントから複数の建物に配管を通して冷水・温水を送り、効率的に冷暖房を行うことで、これにより環境保全・省エネ・防災など多くのメリットが得られるという。具体的なアイテムとしては、大規模開発に適する高効率ヒートポンプ、大規模水蓄熱槽ならびに地中熱の活用などがある。
要となるのは、7000トンという大容量の蓄熱槽。夜間電力で蓄熱し、日中それを供給するのだ。夜間の発電は主に原発によるので、CO2排出量を大幅に減らすことができる。また、プラントを集中させることにより、エネルギー効率をアップ。さらに注目されるのは、地中熱を使った地域冷暖房で、自然エネルギーの活用により、効率をより向上することができる。
「地中の温度は15度から18度と言われていますが、その一定の温度を利用して、ヒートポンプの熱源とするのです。冷暖房の屋外機に循環させる水を冷やしたり、温めたりすることによって、室外機の電気量を節約できますし、室外機から出る熱によるヒートアイランド対策にもなります」
機械や技術の進歩もあるが、さまざまなアイディアを組み合わせることにより、年間総合エネルギー効率(COP)1・3以上、日本最高レベルを目指している。
墨田区の環境まちづくり起爆剤
墨田区の4つのまちづくり方針(将来都市像)のテーマのひとつに「地球にやさしい水と緑のまち」とある。魅力的な水辺空間を整備するだけでなく、屋上緑化や雨水利用、太陽光発電の自然エネルギーなどを導入し、環境負荷の低いまちを目指しているのだ。
「墨田区はもともと雨水の再利用を推進している区です。私どもの協力も当然のことと思いますので、約2600トンの雨水貯留槽を地下ピットに備えています。貯まった雨水を活用して屋上緑化などに利用するのはもちろんですが、緑化できない屋上に散水するなど、建物や外気を冷やす工夫も検討しているところです。空調に対するエネルギー使用量を減らし、ヒートアイランド対策にも貢献できると考えています」。
東京の新しいシンボルとなる東京スカイツリーを擁する「業平橋押上地区プロジェクト」は、環境に対するプロジェクトでもあるのだ。
なお、このプロジェクトの地域冷暖房については、すでに東京都から区域指定を受け、墨田区からは今年1月15日に都市計画決定を受けている。そして経済産業省から今月17日に事業許可が下りた。
また、国土交通省の平成20年度第2回 住宅・建築物省CO2推進モデル事業に採択されている。