特許耐震ドア『デレマース』の一般家庭用ドアの一例。左が通常時、右が緊急時の開閉イメージだ(提供すべて:カンキョー防災)

大地震に備えた都職員向け住宅 約100戸に『デレマース』を設置

 東京都では、大規模災害が起きた際の迅速な初動体制を構築するために、「災害対策職員住宅」を設置しているのをご存知だろうか。

 同住宅は、「東京都防災センター」の入居する東京都庁周辺に約200戸、「立川防災センター」に約60戸を配置。入居職員は、震度5弱以上の地震もしくは都内で災害が発生した場合、昼夜問わず集まり初動体制につくことになっている。

 そのひとつ「柏木住宅」は、新宿区高田馬場エリアにある約100戸からなる集合住宅だ。その全ての住居の入り口には、仮に地震でドア枠が歪んでも出入りできる耐震ドア『デレマース』が設置されている。

 『デレマース』とは、2011年に創業した東海ドア株式会社が独自に開発した耐震ドアだ。大小2つのドアで構成、大地震などでドア枠が歪み、外側の大ドアの開閉が困難になった場合でも、内側の小ドアが開いて出入りすることができる。ちなみにこの構造は特許を取得している。

 設置されたのは2015年。当時、新しい技術を持つ耐震ドアが災害対策職員住宅に設置されたことにより、注目を集めた。その後、民間運営の集合住宅を中心に導入が拡大。2022年現在、首都圏を中心に約5000戸に導入されている。

東京都災害対策職員住宅「柏木住宅」での設置事例

ドアの中の小さいドアから出入可能 被災後の防犯対策も万全

 近年の建物に設置されているドアは、震度7前後の地震にも耐えうる「新耐震基準」に適応し、『デレマース』のような特別な耐震ドアをわざわざ導入する必要はないと思っている人も多いかもしれない。しかし、2016年に起こった熊本地震では、新耐震基準のドアでも歪んでしまい、部屋に出入りできなかったケースもあったという。

 こうした事実と、さらに昨今の震度5クラスの地震が全国で頻発する現状から、改めて耐震ドアの必要性を説くとともに、『デレマース』の特販事業所として普及に力を入れるのが、今回取材に応じてくれた、株式会社カンキョー防災の宮崎恒一代表取締役だ。

 「『デレマース』は、もちろん新耐震基準にも適応していますが、さらに他社の2倍以上の負荷に耐えられます。縦揺れ、横揺れどちらにも対応しており、仮に強い揺れで扉が傾いても、内側の扉の開閉が可能な状態を維持することができます。

 また、従来のドアでは災害時に男性はこじ開けることができたとしても、高齢者や女性、子どもでは開けられないケースも見られますが、『デレマース』は内側の小ドアを軽い力でも開閉できるようになっています。

 さらに、内側の小ドアには本体のドアとは別に鍵がつけられており、避難時、外出中などでも施錠することができるので、被災後の防犯対策も万全です」

現在進めている非常扉の「デレマース」設置事例イメージ

補助金の活用も可能 都の公的住宅や非常扉への導入も

 ビル等のオーナーにとっては、ドアに限らず建物や設備の耐震化の必要性は感じても、目の前のコスト負担や設置期間を考えると導入に二の足を踏みたくなるのも事実だ。だが、『デレマース』は導入しやすい条件が揃っていると宮崎代表は語る。

 「ドアの付け替え工事は、早ければ90分、最大でも約2時間あれば完了します。コストも他社の耐震ドアの設置コストとほぼ同じです。

 また、近年は防災対策にさまざまな補助金がありますが、『デレマース』は建設省(現国土交通省)認定機関の一般社団法人ベターリビングの優良住宅品に認定されているので、災害対策の補助金対象です。さらに、防衛省認定の防音仕様にも適応しており、その補助金も活用できます(※対象者の条件あり)。

 ちなみに、特殊なドアということで、景観面を懸念されるオーナーさまもいますが、『デレマース』はデザイン性も高く、カラーバリエーションも豊富です」

 さらに、住宅に導入すれば、防災対策=価値ある不動産と評価され、資産価値向上にもつながると宮崎代表は言う。

 「SDGsにも掲げられるゴールのひとつに【住み続けられるまちづくり】があります。住宅の防災対策はその一環とも捉えられ、CSR、BCPの観点からも評価されると思われます。こうした視点も多くの住宅オーナーさまに知っていただきたいです」

 特に東京では、「柏木住宅」のような公的住宅への普及拡大とともに、災害時に移動等が困難な障害者、高齢者、子どもが利用する建物の「非常扉」などへの導入も提案していきたいと、宮崎代表は語る。関心のある住宅オーナーはもちろん、都の関係者の方は、ぜひカンキョー防災へ問い合わせを。

株式会社カンキョー防災(東海ドア特販事業所)

TEL:0120?115?993
URL:https://kankyobousai.com

『デレマース』普及とともに地域の防災力向上を目指す、カンキョー防災の宮崎恒一(みやざきこういち)代表取締役