
株式会社東日本環境アクセス
毎日の通勤や通学、休日の外出や旅行など、私たちの生活と密接につながっている電車や駅。快適な車内や清潔なトイレなど、多くの人が行き交う空間を安全でクリーンに保っているのが株式会社東日本環境アクセスである。環境に対するさまざまな取り組みの中から、リサイクルについて取材した。
(取材/津久井 美智江)
駅や列車から出るごみを
リサイクルし、再資源化
株式会社東日本環境アクセスの前身は、1946年、財団法人鉄道弘済会の直轄機関として設置された。63年には同法人の全額出資により弘済整備株式会社として独立。旧国鉄関係の整備業務の受託だけでなく、官公庁をはじめ、一般のビルメンテナンスや都・区の道路清掃なども手がけるようになった。
世の中の目が環境に向き始めた99年、東日本旅客鉄道株式会社の全額出資となり、現在の社名に変更。同時にISO14001を取得し、環境マネジメントシステムも導入された。さらに、2005年にはISO9001も取得。社会環境、ひいては地球環境の向上に貢献する“地球環境企業”を目指している。
「我が社の事業は、ビルメンテナンス、環境、鉄道総合サービスの3つに大きく分けられます。目指しているのは、人にやさしく、自然にもやさしい、そんなサービス。清掃やリサイクルなどすべての事業を通じて、駅やビルなどの生活空間をより美しくするのはもちろんですが、自然環境を守る取り組みも進めています」と話すのは、同社取締役環境事業本部副本部長の水上陽介氏。
鉄道は単位輸送量あたりのCO2排出量がほかの輸送機関より少なく、環境にやさしい乗り物といわれている。しかし、事業規模からすれば、その環境負荷は大きい。JR東日本グループでは、エネルギー利用の効率化や自然エネルギーの利用、交通機関を効率的に組み合わせて利用するインターモーダルの推進など、さまざまな取り組みを行っているが、グループの一員として東日本環境アクセスはどのような役割を担っているのか。
「鉄道事業から出る廃棄物は、量だけでなく種類も多いのが特徴です。例えば駅や列車から出されるごみは1年間に約4・2万トン。これは約10万人が一般家庭で1年間に出すごみの量に匹敵します。これらのごみをリサイクルすることで、CO2の削減や資源循環型社会の実現に貢献できればと思います」と、水上氏。
駅や列車から出るごみは、空缶、空ビン、ペットボトル、新聞・雑誌のほか、JR東日本の使用済み乗車券など。集められたごみはさらに細かく分別され、スチール缶は建築資材などに、ペットボトルの本体は繊維原料、キャップは電力ケーブル用トラフなどに再資源化されるという。
「ほかに一般企業と契約し、機密文書類のリサイクルも行っています。機密文書は機密を保持するため、焼却処分されることが多かったのですが、ダンボール箱ごと粉砕処理する技術により、駅や車内で回収された新聞や雑誌と同様、再生紙としてリサイクルできるようになりました。
これまで2カ所にあったリサイクルセンターが老朽化したこともあり、今、品川の八潮にJR東日本東京資源循環センターを建設中です。この秋に稼動する予定ですので、リサイクルの効率もアップするでしょう」
ちなみに駅や列車のごみは年々減り、分別も徹底し、リサイクル率はアップしているという。
パソコン等の普及により“ペーパー・レス(紙が必要ない)”社会になるといわれていたが、実際は“レス・ペーパー(紙を減らせ)”社会になっているような気がする。
私たち一人ひとりが、ごみを出さないようにするだけでなく、きちんと分別する、駅のトイレなどはきれいに使うといったことを心がけることが、小さなことだが、環境負荷を減らすことにつながるのだと肝に銘じたい。