

●フリーダム株式会社 ●横浜市神奈川区
●2001年設立 ●従業員数5名
NIPPON★世界一 (26)
Nano Air ナノ エアー
フリーダム株式会社
日本にある世界トップクラスの技術・技能?。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
携帯電話の電波遮断装置「WaveWall」や発泡スチロール減容溶液「エコソルプ」など、さまざま製品を世に送り出し、国内外で注目を集めてきたフリーダム。その最新製品である過熱蒸気発生装置の優れた特徴を、開発時の苦労などと合わせてご紹介していく。
(取材/袴田 宜伸)
水素は燃える。酸素は助燃性がある。ならば、その化合物である水も燃えていいはずだが、実際には燃えない。
なぜか。水を高温にすれば、燃えるのではないか?フリーダムCEOの高藤恭胤(たかふじやすたね)氏は、小学生の頃からそんな思いを抱き続けていた。

CEOの高藤氏
水は、「過熱蒸気」になれば水素と酸素が分離して燃える。だがそれには、580℃以上であることが必須で、従来、水の加熱にはガスバーナーや電気ヒーターが用いられてきたが、それでは最高で480℃までしか上がらない。
水を燃やしてみたい?そこにさまざまな可能性をも見出していた高藤氏は、誘導電流による加熱方式を採用。
既に開発していた「電気をロスなく熱エネルギーに変換できるカーボン塗料」を組み合わせて、過熱蒸気発生装置の開発を進めた。
実験を繰り返しデータを取って改良

家庭用のNano Air。反響は上々で、「アトピーのかゆみが取れた」「タバコ臭などが消えた」といった驚きの声が続々と上がっている
家庭でも使えるように、消費電力は1400Wに設定。その中で、「600℃以上の過熱蒸気を効率よく発生させること」を目標に掲げる。
販売されているIHの多くを購入してテスト。最適なハードを見出し、さらに実験を繰り返して、改良していった。
「コイルの巻き数や幅、装置に組み入れる強磁性体の材質など、さまざまな組み合わせをテストし、一つひとつデータを取っていきました」
愛読書は、物理や化学の事典。読み返すことで、開発のヒントをさまざまに得る。
そして遂に、常温の水を1400Wで最高1050℃にまで上げることに成功。今年1月、水素と酸素を分離して放出できる過熱蒸気発生装置「Nano Air」が日の目を見た。
熱蒸気発生装置「Nano Air」が日の目を見た。
植物の生育が良くなり病気にもなりにくい
Nano Airの導入先は、農家のビニールハウス。内部が植物の生育に不可欠な水素と酸素のリッチ状態になるため、植物の生育が良くなり、病気にもなりにくいのだ。

静岡県藤枝市の河原崎農園で稼働中のNano Air。植物に最適な環境を作り出している
また、病院での導入効果も非常に高い。
「室内の空気は、過熱蒸気の噴射口を経由して対流します。噴射口は600℃にも達し、空気中のウイルスはそこで死滅しますから、医師などの病院勤務者や患者の健康が保たれ、院内感染も防げます」
高藤氏は、続けて話す。
「過熱蒸気はガス状ですから、水蒸気とは違い、湿度が上がりすぎることはありません。結露も生じず人にも植物にも最適な70?80%程度の湿度で保たれ、保温効果も高いです」
すべての水がガソリンの代替燃料になる
こうした優れた特徴を有するNano Air。しかし高藤氏は、これをそれだけで終わらせようとは考えていない。
Nano Airは水素と酸素を放出するが、触媒を入れて酸素を結合させれば、水素リッチの状態になる。
つまり燃やすことが可能となり、これを利用すれば、川の水でも雨水でも、すべての水がガソリンの代替燃料になるのだ。
「既に、LPGガスと同等に水を燃やせるようになっていますから、タクシーを水で走らせることも可能です」
これまで、世界的な製品を多数開発してきた高藤氏。だが、氏の研究心はまだまだ満たされていない。
原動力を聞けば、「愛する子供と世界中の女性のため。やっぱりモテたいから」と笑ったが、今後は水の燃料化のほか、「反重量装置の開発とハエの養殖を成功させたい」と意欲を見せる。
高藤氏が次に世界を驚かせるのは、いつだろうか。その時を楽しみに待ちたい。